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by linsshio

ミシガン大学レポート〜その2:Environmental Interpretive Centerを訪れた

c0002089_1464325.jpgアメリカでの環境教育はいったいどんななのだろうか・・その一端に触れるというのは今回の旅の大きな目的のひとつだった。モエマン教授のいるUniversity of Michigan(ミシガン大学)のDearborn校にはEnvironmental Interpretive Center(環境教育センター)という施設があり、どんなところか興味津々だったので訪れることにした。この施設はキャンパスの中にあり、教室や展示室などのある建物から、キャンパスよりも広くてRiver Rouge(ルージュ川)に沿ったフィールドに出られるようになっている。森、草原、川、湖・・そういったミシガンの自然を堪能できるこのフィールドの中には何本かのトレイルがあって、日の出から日の入りまでの間、訪れた人は誰でもそこを歩くことができる。

最初にお会いしたManagerのMr. Michael Perrinはとても丁寧にこの環境教育センタ−のことを説明して下さった。
・2000年に設立されて6年経ったこと
・ Wayne countyとのミシガン大学との共同プロジェクトであること
・ 主な目的は身近なフィールドを用いた環境教育の実践であって、Young Naturalist Programという小学生〜中学生対象のものの他に、幼児、高校生、大人を対象としたプログラムを実践していること
・ 大学での環境教育についての研究の場でもあり、College of Natural Science(理学部)とSchool of Education(教育学部)の学生を対象として、Environmental StudiesとNature teaching programのカリキュラムを実施していること

c0002089_14162.jpgお話を伺って気持ちはわくわく盛り上がりかなり満足、あとはひとりでトレイルを歩いてフィールドを探検してみようかなと思っていたら「これから高校生対象のプログラムがあってトレイルに出るので、もしよかったら合流してみるといいよ。」と言って、そのプログラムを担当しているProgram SupervisorのMr. Richard Simekに話をして下さった。シメック先生は「せっかくだからクラスルームにも来るといいよ。」とのこと・・と、こんな経緯で私はラッキーなことに高校生クラスに潜入!

高校生のクラスは13名くらい、ノートやMichigan Treesという図鑑を手に静かに集まってきた。みんなとても落ち着いていてTVの「ビバリーヒルズ高校白書」のようではまるでない。このプログラムは基本的に週に1回、連続して行っているのだそうだ。シメック先生は、授業のはじめに「今日は日本から仲間が来てるんだよ。」と私をみんなに紹介し、そして「志緒、よかったらどんなことをやっているのかみんなに話してくれないかい。」と言って下さった。私は日本でハーブについての研究をしているんだということや、ハーブは環境教育を学ぶ入口になると思っていて今日のみんなのプログラムにはとても興味があること・・などを話した。先生は更に「志緒、ハーブの研究での成果はどう?何かわかったことがあったら話してよ。」とおっしゃるので、日本のユズやモミ、ゲットウについてのことをお話する機会も得て大満足!

c0002089_143382.jpgクラスルームではまず、前回どんなことをしたか、そのときに出てきたResearch Questionsについて何かわかったかということを先生が問いかける。生徒たちはフィールドを歩きながら毎回何か不思議を見つけ、これを具体的に言葉にして自分のResearch Questionsにする。「fungi(菌類)とalgae(藻類)の違いは?」・・これはある男の子の前回のResearch Questionsのひとつ、何か分かったことは?と先生に尋ねられ、その子が自分が調べたことを静かに話す。先生は簡単には答えを言わず、仮説はどうたてたのか?何を用いて調べたのか?他の生徒で補足はないか?・・といった風に話を進めて、最後にコメントを述べるという感じだ。その他、鳥のFeedingの特徴は?Cache(餌を蓄えること)をするのはblue jay(カケスの仲間)の他には何?といったような質問を先生がして、それに対して生徒たちが知っていることやこれまで学んだことをノートをみたりしながら自分なりの考えを静かに述べる。自分で考えて、自分の言葉で述べる・・そういった形がとてもシンプルに出来上がっていた。「今日は志緒が来ているので、これまでフィールドで観察したメディシナルハーブについて考えてみよう!」とシメック先生が言って下さると、生徒たちはホーソンやら何やら9つくらいのハーブをひょいひょいと口にするのであった。ひとつ答えがある度に先生が、ラテンネームは?特徴は?何に良いの?といった質問を加えて、またそれに生徒が答える。みんなよく勉強していて本当に感心。・・そんな時間がかれこれ30分。さて、そろそろ今日のフィールドへ出てみよう!

外に出るとみんな何かを見ながら「10度。」と口々に言ってメモを取っている。シメック先生が「こういう風にして毎回最初に天候のチェックをするんだよ。」と教えてくれた。みんな双眼鏡、虫眼鏡、メモ帳とペンを持って、先生のお話を聞いていざ歩き出した。
・ 鳥の声を聞いてごらん。この木に集まって何をしているんだろう?
・ この木肌はでこぼこしているね。どんな様子か虫眼鏡でじっくり観てみよう。
・ 湖の水面をじっくりみてごらん。Gold Fishの群れはどんな様子かな?
・ ここはいきなり草原だけどどうしてだろう?風の通り道を考えてごらん。

c0002089_144224.jpgこんな具合に、耳を澄ませて、目を凝らして、鼻を利かせながら、森を歩き、草原を歩き、湖を眺める。「今、紅葉した葉をつけたままにしている主な木が二つあるんだけど何かな?」先生の問いに「white oakとsweet beech! 」と答えが返ってくる。「さてこの木は何だろう?」葉がすっかり落ちて赤紫の芽が付いた低木の前で先生が言う。ぱらぱらと図鑑を捲ってはたとみんなの手が止まり、「エルダ−ベリー」と誰かが答える。「そうだね、エルダーベリーだ。どうしてわかった?」「木の枝の付き方と赤い芽の付き方。」「そうだね。ではブラックエルダーベリーとレッドエルダーベリーはどうやって区別できるのかな?」「エルダーってハーブとしては何にいいの?」・・そんな具合に先生と生徒たちのやり取りが続き、フィールドスタディは続くのであった。

このプログラムの最後は、センターまで戻り、今日観たこと、疑問に思ったことをみんなで確認し合う。そしてResearch Questionsは来週までの宿題になって、みんなSee you!と散っていく。

c0002089_1575273.jpg「じっくりと観る。素直に感じる。しっかりと考える。」・・こういう人間の基本を学ぶためのとっても良いプログラムだ。そして参加している高校生たちの真剣さが素晴らしかった。この教室には居眠りしたり、他のことを考えたりしている生徒は一人もいない。先生の問いかけにしっかりと自分の考えを説明する。フィールドでも先生の話をしっかり聴いて素直に体験する。こういうものを観て、考えて育つ子供たちが浅はかな大人になる理由は何もない。この子たちの中から素晴らしいサイエンティストが生まれるのだろうと本当に思った。

今回、環境教育センターを訪れてプログラムに参加させて頂いて、環境教育の実情に触れるとともに、まともなアメリカの断片を見たような気がした。全体から考えるとほんの一握りかも知れないけれど、まともなアメリカは確かに存在するのだと思った。
それと同時に、うかうかしていると日本人の方が「0の次は1」的な思考、0と1の間を繋ぐ無数の点の道筋をじっくりと辿ることのできない人間だらけになってしまう・・そんな危機感を覚えたのでした。

c0002089_1583298.jpgp.s. はじめて見たOsage Orange(クワ科Maclura pomifera)の実。ハンドボールくらいの大きさで、無気味な模様だけど柑橘系に似たいい香りがします。別名のBodarkはフランス語の「bois d'arc」からきていて「bow wood」という意味でネイティブアメリカンが弓にして使ったのが由来だそうな。初期の入植者たちは服を染めるために根から黄色の染料を抽出したそうな。


c0002089_16232922.jpgp.s.2 Environmental Interpretive Centerの冬のプログラムには「MAPLE SYRUPING」というのがある。フィールドにはSugar Maple(カエデ科Acer saccharum)の立派な木がたくさん。そしてこんな穴があいている。ここにチューブを刺して器を用意しておくと、数時間歩いている間に樹液が溜まるんだそうな。それをセンターでぐつぐつ煮てメイプルシロップの出来上がり。みんなで楽しむんだそうな。想像しただけで美味しそう!このシロップ作りもネイティブアメリカンが新アメリカ人たちに教えてあげたんだそうです。
by linsshio | 2007-01-08 01:45 | 旅した